ホリスティック豆知識Blog

2020年09月03日(木)

豆知識

愛犬のためのホリスティックグルーミングレッスン 【9】「乾かし」と「ブロー」

石井あゆみさん

【根拠あるやさしいグルーミング】をテーマに、犬の身体の構造や動きを研究し、グルーミングを行うトリマーの石井あゆみさん(トリミングサロン「leaf dog(リーフドッグ)」経営)に、飼い主さんに知っていただきたいグルーミングの基本についてシリーズでレクチャーしていただきます。


定期的なグルーミングは人と暮らす今の犬たちにとっては、必要不可欠なこと。
でも方法を間違えると、とても負担のかかることになります。
そして、その原因となっているのが、飼い主さんの日頃の間違った方法だったということも珍しくありません。

 

意外と知らなかったことや、間違って行っていたことなど、新たな気づきが満載です。
犬の身体の構造、特性を知り、そのうえで、犬が一生必要とする身体のケアを犬にも飼い主さんにも負担をかけないやさしい時間にするために、ぜひお読みください。

今回は「シャンプー後の乾かし方とブロー」についてご紹介します。

 

 

「乾かし」について

「乾く」とは?

乾かしとブローの違いは以下です。

■乾かし:単純に水分を飛ばし、乾かすこと
■ブロー:毛の形状を形成し、ととのえること

 

まずはじめに、「乾かし」とは何をしているのか考えていきます。
「乾かし」は、単純に水分を飛ばし、蒸発させることです。
すぐに頭に浮かぶ方法は、水を沸騰させることですね。
でも、風のある日や暖かい日に洗濯物を干すと、すぐに乾きますよね。つまり沸騰させなくても、水分を空気中に分散させることができるのです。

 

それには「飽和水蒸気圧」が関係しています。
飽和水蒸気圧とは、ある温度で、空気中に目いっぱい水蒸気を含める能力のことで、その水蒸気の圧力で表します。
飽和水蒸気圧は、温度に比例します。つまり、温度が高ければ高いほど、多量の水蒸気を含むことができます。

 

洗濯物が乾くのは、周囲の空気が「まだ水蒸気を取り込める状態」、つまり「飽和水蒸気圧に達していない状態(≒湿度が低い状態)」だからです。
風が強い日に洗濯物が早く乾くのは、風が洗濯物の周りにある水蒸気を含んだ空気を吹き飛ばし、乾燥した空気(飽和水蒸気圧に達していない空気)と入れ替えてくれてくれるからです。

 

つまり、周りの空気の「飽和水蒸気圧」を上げれば、洗濯物から水蒸気が空気中に散らばっていく速度が速くなります。
また、もともと洗濯物に含まれる水分量は、多いより少ない方がもちろん早く乾きますね。

 

これらをまとめると、水分を早く蒸発させるためによりよい条件は以下です。

——–

◎水の量:      多い<少ない
◎風の圧力・風の強さ:弱い<強い風
◎水の周りの湿度:  高い<低い
◎水の周りの気温:  低い<高い

——–

 

犬の毛を乾かす時もこの考えを元に、乾かしていく必要があります。

ここで注意してほしいのが、「ドライヤーの風を高温にする必要はない」ということです。
上記の条件が揃えば、風自体を高温にしなくとも乾くということを理解していただければと思います。

 

効率的な乾かし方

では、実際に乾かす時にどうすれば効率的に乾かせるのかを見ていきます。


【1】乾かす部屋の環境を整える

前述したように、乾きやすい環境を整えます。
季節によって難しい場合もありますが、目指す所は「春の乾燥したぽかぽかとした環境」です。
室温は15-22度くらい。湿度は50%以下にできると良いです。室温はエアコンで調整し、湿度は風の流れを作ると少し下がりますので、サーキュレーターの使用がお勧めです。

 


【2】水分量を減らす

シャンプーが終わった後、パートナーの体には大量の水分が付着しています。まずは、これらの水分を減らすことから始めます。大量の水分を移動する方法は2つあります。

■方法1:タオルで吸い取る
吸水性のよい、専用のタオルなどを使用するとよいでしょう。
水分をタオルに移動させることで、風を当てて乾かす時間を減らすことができます。

■方法2:スピードドライヤーで吹き飛ばす
大型犬などは、プロが使用するスピードドライヤーを使用すると効率的です。
スピードドライヤーの使用の際に気を付ける事は、犬の顔周辺に当てない事。
耳の中に風が入らないように、スヌーズやタオルを顔に巻くようにしましょう。
毛並みに沿って風を当てて水分をそぎ落とすようにしていきます。

 


【3】風を当てて乾かす

タオルやスピードドライヤーでおおむね水分を減らせたら、次に、ドライヤーの風を当てて更に水分を減らしていき乾かします。この時、毛と毛の間に水分がありくっついてると、毛の表面が空気に触れていない状態です。
ブラシを入れることで、毛が空気に触れている面積が大きくなり、より早く乾きます。

 

■ブラシを入れながら、毛をバラバラに
濡れている毛にブラシを入れて毛をパラパラにします。
ブラシはスリッカーブラシだと肌を傷める可能性がありますので、ブラシの先が丸くなっていて、ブラシの毛が柔らかいシャンプーブラシ(画像の紫のブラシ)を使用するか、やわらかめの獣毛ブラシがお勧めです。上級者でスリッカーブラシを使用できる人は 先に丸く玉が付いたブラシを使用してください。

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毛並みに逆らわず、毛並みに対して左右に動かす程度でOKです。この作業を入れることにより、毛玉防止にもつながります。

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■ドライヤーの温度に気を付ける
スピードドライヤーをお持ちで、パートナーが嫌がらなければそれを使い、無い場合はやご家庭ではハンドドライヤーを使用しましょう。
ハンドドライヤーの場合、ドライヤーの熱による「低温やけど」に注意が必要です。犬の皮膚は人より薄いので熱などによるダメージが皮膚の奥まで届きやすく、「低温やけど」になりやすいです。すぐに症状が出ず、気付きにくいため注意しましょう。

 

低温やけどとは、体温以上60度以下の熱源によって起こるやけどのことです。
皮膚に50度の熱源で3~4分ほどで起こる場合もあります。また、老犬など循環不良であったり、皮膚や毛が水で濡れている場合は熱が伝わりやすく悪化する要因となります。

 

一般的に販売されているドライヤーの温度は120度前後です。(JIS規格室温30度で吹き出し口より3㎝の部分で計測)この温度が出るハンドドライヤーを使用する場合は、犬の肌とドライヤーの距離を十分に空ける事が大切です。室内の気温やドライヤーの性能などにもよりますので、犬に使用する前にご自身の腕等に風を当ててみましょう。熱で肌がピリピリするような感覚があればドライヤーが肌に近すぎます。熱を感じて5秒以上当てれないような場合も近すぎます。

 

温風の時は20~30㎝は離して使用し、同じところに2秒以上当てないようにしましょう。温風の後にすぐに送風に切り替えることで、風の温度を上がりにくくすることも大切です。また、ドライヤーの吹き出し口を左右にこまめに振れば、一か所が熱くなりにくくできます。
最近は高性能のドライヤーが多く出ています。温風と送付が交互に出るものや、温度設定ができるものもありますので、60度以下の低い温度が設定できるドライヤーを使うようにしましょう。

 

■風の強さは強で
風の強さは強い方が良いので、家庭用ドライヤーでもできるだけ風量が多いものを選びましょう。風を当てながらたびたびシャンプーブラシや獣毛ブラシで毛をパラパラにしているとどんどん乾きます。


■無理にしない!
最大のポイントは、パートナーが嫌がったり、じっとしていなかったりする場合は、無理に行わないようにすることです。
部屋の環境が整っていれば、冷えないように注意しながら、ブラシを入れるだけで自然乾燥でも乾かすことはできます。特に高齢の犬の場合は体温が下がりやすいので、タオルで体を包んであげるのも有効です。犬の様子を良く観察して、低体温や逆に熱中症にならないように見てあげてください。

 

「ブロー」について

オーナーがご自身で行う場合は、乾かしだけでも大丈夫ですが、犬が嫌がらず乾かしができる場合は、ブローにチャレンジしてみてください。
初めにも述べたようにブローは毛を形成する事です。

 

毛の成分はいくつものアミノ酸が連結されたタンパク質からできています。犬も人も成分は同じです。犬の方が細く、構造的に中央の空間がとても狭いと言われています。

 

このアミノ酸の結合は様々な結合から頑丈な毛を保つようにしていますが、毛は水にぬれると柔らかくなり、乾かすと硬くなります。これは毛の中のアミノ酸結合のOとHの結合部分に水分子のOとHが入り込むことで結合が切れたりくっついたりする「水素結合」がおこなわれるからです。毛に水分を含ませて結合を切り、毛を好みの形状にしたと時に水分を取り除き再結合させることで、「ブロー=毛の形状の形成」ができます。

 

犬の毛のブローは、犬種や好みにもよりますが、毛をまっすぐに伸ばすことが多いです。例えば、プードルはカールを伸ばすスタイリングが多いです。毛をできるだけまっすぐにしたい場合はブラシで毛を伸ばします。そこに風を当てて水分を取り除くという作業になります。

 

効果的なブローの方法

ブローは水を利用して結合を切る事と再結合をさせる事ですが、毛の内部にわずかにでも水分があれば、そのわずかな水分に熱を加える事でその水分子を振動させ再結合させることができます。人間の髪の毛のセットで乾いた毛にアイロンをかけて毛を形成させるのと同じ事ですが、犬のように細い毛は高温でなくとも毛を形成できます。

 

ドライヤーの温度が設定できるのであれば60-100度くらいの温度の範囲で設定し、当てる時間は1-2秒程度でOKです。肌に熱が加わらないように十分注意します。熱を加えて毛を形成した後、形を保つために、送風にし、熱を冷まします。

 

この水素結合には弱点があります。それは湿気です。
梅雨時期に、朝にちゃんとブローしてばっりち決めたヘアスタイルも、髪の毛が爆発したかのようにうねったり、スタイルが乱れたりすることがありますよね。それは空気中の水分(湿気)が髪の毛の中の水素結合の部分に入り込み、結合を切って再結合をしてしまうからです。ですから、そのような場合は、あらかじめブロー後にスタイリング剤を使用して形状をキープしたりしますよね。

 

犬が通常の生活でそのように形状を保つ必要はありませんので、スタイリング剤は必要ありません。ブローで伸ばしたのに、カールがでてきてしまっても、それはそれでカールを楽しむという事にシフトしても良いかと思います。

 

■上級テクニック

乾かしの時も毛をパラパラにすることは大切ですが、ブローでも毛をパラパラにすることはとても大切です。
一本の毛がほかの毛と交差していない独立した状態を作る事がプロの仕事になります。
ブローでこのような状態を作り上げる事ができればカット後のスタイル維持にも役立ちます。毛玉ができにくくもなりますので、プロの方はチャレンジしてみてください。


■上道具を揃える
お家で乾かすときも道具を揃えることでオーナーもパートナーも負担が少なくできます。ぜひこの機会に道具にもこだわってみてはいかがでしょうか。

 

■嫌がる場合や長毛種の場合は、トリマーさんと相談しながら
長毛のパートナーで、毛の長さが地肌から5cm以上ある場合はもつれやすく、もつれた状態のまま洗うと、毛玉になります。毛玉は、場合によっては皮膚を引っ張り、パートナーに苦痛を与えることがあります。また、毛玉を取ろうとブラシを無理に入れると、犬にとっては激痛となります。長毛の場合はトリマーさんと相談しながら行いましょう。

 


最後に

シャンプー後、完全に乾かさなきゃ!ブローしなきゃ!と頑張る必要はありません。
犬の体調が良ければ自然乾燥でもOKです。
無理に乾かさなければと頑張りすぎて、低体温、熱中症、低温やけど、ブラシでの擦過傷、皮膚の過度な乾燥などを起こせば本末転倒です。あくまでも「負担がないこと」がケアの基本。難しい場合は必ず、トリマーに相談しましょう。

 

 

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◆リーフドッグ石井 あゆみ
ホリスティックケア・カウンセラー
JKC A級トリマー
日本ペットサロン協会アンバサダー

専門学校を卒業後2つのお店で修行をし、その後、2009年27歳で起業しleaf dogを開業。
論理的にとことん優しいグルーミングを日々研究している。
国内外のコンテストでの受賞暦も多く、高い技術を持つ。
業界誌トリムの連載を2017年8月号から開始。

 

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