ホリスティック豆知識Blog

2019年12月21日(土)

豆知識

犬と猫の困った行動問題を獣医師が治す?『行動診療』【2】ケース例

みなさんは、パートナー(愛犬愛猫)の困った行動にお悩みではありませんか?
そんな時、解決方法の1つとして、「動物病院の行動診療を受診する」という方法があります。

ホリスティックケア・カウンセラー養成講座テキストの「犬と猫との関わり方」「ストレスケア」を担当する藤井仁美先生は、日本で数少ない『獣医行動診療科認定医』であり、しつけやトレーニングを専門分野とする獣医師として活躍中です。

前回は「行動診療とは」?を解説しましたが、今回は、実際の行動診療のケースを元に、どんな風に経過観察を行い、治療方針を変えていくのかなどをご紹介します。

 

あなたがお悩みの行動問題の原因や対策のヒントが、見つかるかもしれません。

 

2回目以降の行動診療

初回から1~4週間後に行います。行動問題の起こる時間と詳細、生活スタイル、ホームワークとして提案した治療プランの実践状況などを日課表や動画を使って確認しつつ、初回の診断が正確だったか、提案した治療プランが改善につながっているかなどを確認しつつ、プランの見直しや追加のプランなどについて話し合います。

行動問題はすぐには治らないものです。じっくりと何回も行動診療を重ねて、ときにはトレーナーにトレーニング方法を指導していただきながら、少しずつ改善していくことを目指します。


行動診療の例

マルチーズ

【マルちゃん(仮名)マルチーズ 1歳2ヶ月齢 メス(避妊手術済み)】の場合

1.お悩みの行動問題は?

行動問題:「吠え」

マルちゃんのオーナー様は

「家の中で外を通る犬の気配や吠え声などで吠える」
「散歩中に犬に対して吠える」
といったお悩みがあり行動診療にいらっしゃいました。
いろいろとお話を伺いマルちゃんの様子も観察した結果、以下のような診断になりました。

 

2.診断

診断:恐怖や警戒による吠え、犬に対する不安、オーナーの関心を求める行動 などの併発

 

A)行動問題を起こさせている直接の原因(きっかけ)/悪化させている要因

  • 家の外を見知らぬ犬が通ること(吠えの原因(きっかけ))
  • 散歩中に見知らぬ犬の姿が見えること(吠えの原因(きっかけ))
  • 吠えた時にオーナー様が声をかけたり抱っこをすること(悪化させている要因)

B) 行動問題のバックグラウンドにある要因

  • 犬自身の気質:臆病で怖がり
  • 社会化不足:ペットショップ出身で社会化が十分ではなかった
  • トレーニングの欠如:オーナーが犬をトレーニングしたことがなかった
  • 生活スタイル:留守番時間が長く遊びや運動が十分ではなかった
  • 環境:自宅や周辺を犬がよく通る環境だった
  • 接し方:オーナーが犬に対して過干渉かつ過保護だった
  • 医学的問題:膝蓋骨脱臼がありときどき外れて足をあげることがあった

 

3.治療プラン

A) に対して

  • 状況回避をして、吠える機会を減らす:特に散歩中は犬に会わない時間帯やコースを選ぶ
  • 吠えても無視をして犬に無関心でいて、声かけ/念押し/抱っこなどのリアクションを中止する
  • 家の中なら吠えているマルちゃんを置いて立ち去る
  • 外で吠えた場合は声かけや抱っこはせず黙ってその場から歩き去る
  • 家の環境整備をして、犬が通る道から離れた部屋で過ごさせるようにする
  • クレートトレーニングをして、部屋の中のさらにクレートの中で休めるようにする
  • おやつなどのご褒美を使った正の強化による基本トレーニングをして、オーナーの指示に従ってオスワリ、マテ、オイデ、ミテ(アイコンタクト)など望ましい行動ができるようにする
  • 家の中で犬の気配を感じてソワソワし始めたら、オイデの指示を出し、吠えずにそばに来ることができたら「イイコ」言ってご褒美を与える
  • 散歩中に吠える対象(犬)を遠くで見つけ、ソワソワし始めたら、オスワリ、マテ、ミテの指示を出し、吠えることなく指示に従ったらご褒美を与える

B)に対して

  • 遊び、運動、トレーニングなど活動的な時間を作り犬が退屈せず刺激の多い生活をする
  • 特に長い留守番後はしっかりと体力を発散させる時間を作る
  • 毎日楽しみながらトレーニングをして、望ましい行動(オスワリ・マテなど)を教える
  • 家事など忙しくて構えない時は、パズルフィーダー(知育玩具)を与えてひとり遊びをさせる
  • マルちゃんに対する過干渉や過保護を止める
  • ON /OFFのメリハリをつけて接する(ON:100%向き合う OFF:無関心でいる)
  • ON /OFFのメリハリをつけた生活を心がける(ON:活動時間 OFF:休息時間)
  • 自宅の環境整備をし、休息時間には落ち着ける部屋のクレートに入って休ませるようにする
  • 膝の痛みなどを防ぐ対策として関節用のサプリメントを飲ませたり、整形外科に詳しい獣医師の診察を受ける(同病院のグループ内にいる整形外科の先生を紹介)

4.経過(フォローアップ)

マルチーズ

治療開始2週間後には、吠えの軽減が見られました。

吠えた時にオーナー様が関心を示さず立ち去ったりすることで、「吠えてもオーナーはかまってくれないし、むしろ自分のそばからいなくなってしまう(悪いことが起きる)」と学習させたことが大きかったようです。


1ヵ月後にはさらに吠えが軽減しました。留守番後に体力を発散させることで外を通る犬の気配や物音などを気にしなくなってきたこと、散歩中に吠えて興奮する機会を減らすことで落ち着いて歩けるようになったことなど、オーナー様が続けた努力が実ったようです。

その後も2週間おきに再診に来ていただき、私の指導やサポートをもとに環境整備やトレーニングなどを少しずつ進めてもらい、2ヵ月後にはオーナー様の指示に素直に従えるようになりました。クレートの中にも自分から入って休んだりもしているとのことです。6ヵ月後には吠えがかなり改善し、オーナー様も満足していました。この間に膝の診察も受けて適切な治療も行われました。

マルちゃんの場合、比較的若いうちに行動診療をしたこと、オーナー様が積極的に自宅で治療プランを実践したこと、熱心に行動診療の再診に通ってくれたことなどが効を奏したケースでした。

 


 

いかがでしたか?診療の回数を重ねるごとに治療方針を調整し、経過を見守る行動診療。もしお近くの動物病院にあれば、困ったときにぜひ活用してみてくださいね。

【バックナンバー】犬と猫の困った行動問題を獣医師が治す?いま話題の『行動診療』とは【1】

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藤井 仁美(ふじい ひとみ)
獣医師/獣医行動診療科認定医/ペット行動カウンセラー

藤井仁美先生の行動診療受診は以下より受付しています。
代官山動物病院
自由が丘動物医療センター


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