ホリスティック豆知識Blog

2019年12月12日(木)

豆知識

犬と猫の困った行動問題を獣医師が治す?『行動診療』【1】

みなさんは、パートナー(愛犬愛猫)の困った行動にお悩みではありませんか?
そんな時、解決方法の1つとして、「動物病院の行動診療を受診する」という方法があります。

 

実は、ホリスティックケア・カウンセラー養成講座テキストの「犬と猫との関わり方」「ストレスケア」を担当する藤井仁美先生は、日本で非常に数少ない『獣医行動診療科認定医』であり、しつけやトレーニングを専門分野とする獣医師として活躍中です。

 

今回は、藤井先生が実際に行っている診療を紹介しながら

◎「行動診療」ってなに?
◎しつけ教室やトレーナーによるレッスンとの違いって?

などについて、詳しく解説します。

 

行動診療ってなに?

散らかす犬

一緒に暮らすパートナーがオーナー(飼い主)にとって困った/心配な/気になる行動をすることがあり、これを行動問題と呼びます。この行動問題について、行動学に詳しい獣医師(獣医行動診療科認定医など)が診療すること(医療従事者が診察や治療などを行うこと)を「行動診療」といい、具体的には以下のようなことを行います。

 

【1】カウンセリング
オーナーから行動問題の詳細や関連する情報を聴き取る

【2】検査と分析
来院時およびご自宅で撮影した動画などを使って、パートナーの行動を観察し分析する

【3】診断
【1】および【2】を総合して行動問題の診断をする

【4】治療プラン
診断にあわせて、オーナーに実践していただく治療プランを提案する

【5】コーチング(実践指導)
治療プランをオーナーが円滑に進められるようサポートする

【6】フォローアップ
定期的に再診し、経過やパートナーの様子を確認して治療プランを調整する

 

行動問題の治療は、一般的な病気や怪我の治療と違い、獣医師が問題を治すというものではなく、オーナー自身が積極的に問題に向き合い、治療プランを実践することで改善するものとなります。獣医師は適切な診断をし、治療プランを提案し、オーナーの実践をサポートする役目を持っています。


行動診療の流れ

もう少し具体的に行動診療についてご説明しましょう。

行動診療前

私が行っている行動診療は、完全予約制です。
来院したら「カルテの作成」と「行動診療科 カウンセリングシート」の記入をしていただきます。
※カウンセリングシートの見本はこちら(犬用/猫用

 

初回の行動診療

【1】カウンセリング
カウンセリングシートに記入されたことをもとにカウンセリングを行います。
まず行動問題の詳細についていろいろと伺います。

  • 最初にそれが問題になった時のこと
  • 行動問題の経緯や変化
  • 行動問題のきっかけや状況
  • 行動問題の対象
  • 行動問題の頻度・深刻度・持続度
  • 行動問題が起きた時のオーナー様の対応(今まで試したこと)
  • オーナー様の対応に対するパートナーの反応や問題の改善度


これらの質問をすることで、行動問題そのものについて詳しく分析することができます。

 

さらに実際の行動問題以外の質問もします。例えば以下のようなことです。

  • パートナーの出身や入手前の経歴
  • パートナーの病歴
  • パートナーおよびオーナー様の生活スタイル
  • 普段(問題が起きていない時)のパートナーの様子
  • ご自宅内や周囲の環境
  • ご家族の生活スタイル/お世話の仕方/パートナーへの接し方  
  • 医学的問題(病気や怪我)の有無・病歴や経過・治療歴 など

この質問の回答から行動問題に関連する要因を探ることができます。

 

【2】検査と分析
カウンセリング中はパートナーの様子も同時に観察します。犬であれば場所を変えて観察することもあります。自宅や散歩中などに撮影した動画を確認することもあります。

 

【3】診断

【1】と【2】から
A)行動問題を起こさせている直接の原因(きっかけ)
B)行動問題のバックグラウンドにある要因(影響を与えたり悪化させている要因)
の2種類の要因を分析して行動問題に対する診断をします。

 

【4】治療プラン
【5】コーチング(実践指導)
【6】フォローアップ

そして診断に沿って行動問題を軽減させる治療プランを提案し、簡単に方法なども説明してホームワークとしてご自宅で実践していただきます。毎日のできごとを記入する日課表をお渡ししたり、行動問題が起きている時の動画などの撮影をお願いすることもあります。

 

また、治療プランの中にはトレーニングが含まれることがあります(特に犬の場合)。トレーニングをすることで行動問題を望ましい行動に変化させることができるからです。場合によっては行動診療をした獣医師が信頼できるトレーナーを紹介し、自宅での出張レッスンを行うこともあります。

 

また深刻な行動問題の場合は、薬物やサプリメントによる治療を行うこともあります。生活スタイルを変えることが不可能で長時間留守番などで犬が明らかにストレスを抱えている場合には、幼稚園/保育園/ペットシッターなどと連携して治療をすることもあります。

最後に次回の予約をしていただき、初回は終了となります。

 

行動診療は、しつけやトレーニングと同様に“治療”に対するオーナーの積極的なかかわりが必要となりますが、「獣医師」が関わることによって、現在や過去の病歴など、より広い視点で行動に影響を与えている要因と改善方法を的確に診断できるという強みがあります。

 

【続きはこちら】

犬と猫の困った行動問題を獣医師が治す?いま話題の『行動診療』とは【2】ケース例

 


藤井 仁美(ふじい ひとみ)
獣医師/獣医行動診療科認定医/ペット行動カウンセラー

藤井仁美先生の行動診療受診は以下より受付しています。
代官山動物病院
自由が丘動物医療センター


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