ホリスティック豆知識Blog

2022年03月15日(火)

豆知識

子犬にもおすすめ『Tタッチ』

暖かい春になって、「子犬や子猫を迎えたい」または、「最近迎えた」と聞くことも増えてきました。

今回は、ホリスティックケア・カウンセラーであり、Tタッチのプラクティショナー資格を持ち活躍する中里真由美先生にTタッチの極意を教えていただきます。(本記事は、愛犬の困った行動に効く「Tタッチ」の豆知識ブログと、講座テキストを編集した記事です)

 

Tタッチの基本知識

Tタッチって何?

Tタッチは、動物たちの感情、精神、体のバランスを整えるための技法として、1983年にアメリカで誕生しました。手に負えない気性の荒い馬に、「円を描くように皮膚を動かすタッチ」を行ったところ、馬の気持ちが落ち着き、リラックスして従順な態度を示したことから、いろいろな動物に合わせて開発されました。

T タッチは、身体に非習慣的なタッチをすることにより、皮下組織から脳へ新しい知覚情報を伝達します。それにより、タッチした部分の細胞機能が目覚めます。また、副交感神経に働きかけ、リラックス、集中力、学習機能を高めます。

例えば、恐がり、攻撃的な犬は口のまわりやしっぽの付け根が緊張しています。感情面で問題がある場合には身体にも影響を与えるからです。逆に身体に問題がある場合には、感情にも影響を与えます。

T タッチによって新しい知覚情報を与えることで、緊張の強い部分がゆるみ、動物にとって自然体で楽にすごすことができる「ニュートラル」なポジションになります。こうして、感情、精神、体のバランスを整えることで犬が落ち着きと自信を得られ、学習能力と意欲が高まるのです。

基本は『円を描くタッチ』

T タッチにはさまざまな種類がありますが、多くは「円を描くタッチ」を含んでいます。

【方法】
自分の指、手、腕、肩全てをリラックスさせ、手のひらを優しく動物の体に乗せるように触れます。
この状態で、手で1 と1/4 の円を描きながら皮膚を動かします。身体の表面で手を滑らすというのではなく、皮膚自体を動かします。
時計の短針6 時の位置から始めて時計回りに再び6 時になるまで皮膚を押し動かし、そのまま8時か9 時のところまで続けます。一つの円を描き終わったら、優しく手を離し(もしくはずらして)別の位置で同じように1と1/4の円を描いて皮膚を動かします。

 

やんちゃな子犬にもTタッチ

 

非常に効果的だったケースをご紹介します。
7ヶ月の子犬で、「すごくやんちゃで困っているので、もう少し落ち着いて欲しい」というご希望のあるオーナー(飼い主)のお宅にお伺いした時のことです。

確かに、なかなかの「やんちゃさん」でした。
そのパートナー(愛犬)はお口での表現、つまり噛み癖が「甘噛み」というレベルでは片付けられなくなりそうなくらいに強く出ていました。ちらっと観察すると、オーナーの腕に噛み傷の痕がかなりありました。

オーナーは、噛み癖を問題視されてないのか、それよりも「落ち着いて欲しい」という希望が上回っていたのか、あるいはその両方だったのかもしれませんが、噛み癖についてのリクエストはありませんでした。
その時の私の感想は、「このまま放置していたら、噛み犬になりそうで怖いな…」でした。

パートナーにTタッチのセッションを行いながら様子を見ていると、口元を触られることには抵抗が無いようだったので、これ幸いにとマウスワークを混ぜ込みました。

効果はてきめんでした。
2週間後に再びお伺いしたときには、まだまだ動きはやんちゃなままでしたが、口の使い方がとても上手になっていたのです。再びちらっと観察すると、オーナーの腕に新しい傷はない様子です。

この日の帰りがけに、「お口の使い方が優しくなりましたね」とお伝えしたところ、オーナーは驚いた表情をされました。「そういえば、前回のセッションから噛まれてないかも…」と、オーナー自身もそこで初めて気がついたとのことでした。

その後、そのパートナーはお口を優しく使えるようになり、自分自身の感情の表現も上手になって、「すごくやんちゃで困る」というレベルから、「はしゃいでしまうこともあるけれど、年相応に元気」なわんちゃんへと進化し、オーナーがわんこライフを楽しめるレベルになったのです。

 

Tタッチのマウスワークは、犬の噛み癖や吠え癖に対してとても効果が期待できます。(ただし、普段からお口周りを触らせてくれるパートナーの場合です。お口周りを触らせないパートナーは、マウスワークは避けてください)

 

こんな時、こんなTタッチ ~怖がり・神経質~

怖がり、触られるのが苦手といったパートナーにもTタッチがおすすめです。

「怖がりだけど触られるのが好きだったり平気なパートナー」なら、『手のひら』全体を使う「アバロニのタッチ」がおすすめ。手のぬくもりやだけでなくふんわりとした安心感が伝わり、オーナーとの絆を深めることに役立ってくれます。

 

一方、「触られるのが苦手なパートナー」には、『手の甲』を使った「ラマのタッチ」がおすすめです。
こういったパートナーは感覚が繊細で、『手のひら』からのぬくもりが少し重いと感じているため、『手の甲』を使うことで「触られすぎない」安心感を感じてもらうことができるのです。そうしながら、触られることに少しずつ慣れてもらうことができます。「知らない人に触られることが苦手なパートナー」には、相手の方に「手の甲でなでてあげてください」とお願いするといいですよ。


(アバロニのタッチ、ラマのタッチはホリスティックケア・カウンセラー養成講座で詳しく学べます。)

やってみよう!はじめてのTタッチ

おうちで、普段から取り入れて頂きやすいTタッチの方法をご紹介します。

ノアズマーチ

今回ご紹介するのは、『ノアズマーチ』というTタッチです。

さて、ここで皆さんに質問です。
パートナーがおうちで留守番しています。そこへ、あなたが帰ってきました。
パートナーは「うわーい!帰ってきた!おかえりおかえりー!」と、テンション高めに出迎えてくれます。あなたは「ただいま。お留守番ありがとうね。」とを伝えながら、パートナーをなでます。

さて、あなたはその時、どんな風になでていますか?(擬音語だけのイメージですが、どれが近いですか?)

1.わしゃわしゃわしゃ
2.な~でな~で
3.がっしがっしわしゃわしゃ~ ぽんぽん

多くのオーナーは、帰ってきたときに「わちゃわちゃせずに落ち着いて欲しい」と思っていることと思います。ですが、パートナーのテンションの高さに引きずられる形で、オーナー様自身の行動も1や3のようになったり、声も高くなったりしがちではないでしょうか。

帰ってきたときに落ち着いた状態でいてほしい、もしくは多少はしゃいでもその後早めに落ち着いて欲しいと思っているなら、2が効果的です。1や3のように、短いストロークで、速く、力強く触れることは、動物を興奮させる作用があるからです。逆に、 長いストロークでゆっくりなでる動きは、動物を落ち着かせる作用があります。

Tタッチの「ノアズマーチ」は、「長いストロークでゆっくりなでる」タッチとなります。

 

【ノアズマーチ 手順】

 

■頭から首、肩(できれば背中・腰・お尻・尻尾)まで、被毛ではなくその下にある皮膚を意識してゆっくり長いストロークでなでてあげてあげましょう。

■普段、何気なくパートナーをなでるときに、いつものなで方を「ノアズマーチ」に変えてみてください。

■コツは、『被毛ではなく皮膚を手のひらで触るイメージ』で『ゆっくり』と『長いストローク』でなでることです。そうすることで、パートナーは自分自身の体の境界線を意識しやすくなります。自分の体の境界線を意識することで、自分自身を認識しやすくなり、その結果、自分自身を保ちやすくなる=落ち着いた状態を保ちやすくなります。

 

ラマのタッチ

とはいえ、じっくり触られるのはちょっと苦手なパートナーもいますよね。
そんなときには、手の甲を使う「ラマのタッチ」が使えます。このタッチは1と1/4の円を描く使い方もありますが、ノアズマーチのように長いストロークでゆっくりと撫でることにも使えます。

物をつかむとき、私たちは手のひらを使います。動物たちは本能的にそのことをよく理解しています。
知らない人に触られるのが苦手だったり、じっくり触られるのが苦手な子は、『手のひら=つかまれる』ということを知っており、それから逃れたいと思っている場合があります。そういうときには、手の甲を使います。
手の甲では物をつかむことはできないという、その安心感から、触られることが苦手なパートナーでも、触られることを受け入れてくれるケースが比較的多いためです。

手のひらと手の甲で、触られる感覚がどのくらい違うか、実際にご自身で体感してみましょう。
自分の手や腕の重さを自分の筋肉で支えて、皮膚に触れます。反対側の腕や太ももなど、場所は自分で触りやすい場所ならどこでもいいですよ。

 

【ラマのタッチ 手順】

■まずは、先程の「ノアズマーチ」で、手のひらでしっかりと皮膚を意識して、ゆっくり長いストロークで触れてみてください「ゆっくり」のイメージは1秒間に5cmくらい進むくらい速度です(皆さんの腕の付け根から指先までなら5~6秒くらいです)。3回くらい繰り返してみてくださいね。

■次に、同じことを「ラマのタッチ」、つまり「手の甲」で体験してみましょう。手の甲でゆっくり長いストロークでノアズマーチです。これも3回くらい繰り返してみましょう。

 

どうですか?手のひらで触れたときと、手の甲で触れたとき。
触れる側の手の感覚も「手のひら」と「手の甲」では違う感覚を感じられたでしょうが、触られた側でも青の感覚の違いを感じられましたか?


多くの方は、手のひらでノアズマーチをしたときは「しっかりと触られている感じ」がして、手の甲の方は「さらっと軽い感じ」だと思われたのではないでしょうか。パートナーたちも同じような感覚を得ています。

こんな風に、「このTタッチってどんな感覚なの?」ということを実際にご自身で体験しておくと、「こんなときに使うのね」とイメージしやすくなりますよ。そのイメージが出来てくると、パートナーの様子や状態にあわせて「このタッチがよさそう」と自然にタッチを選べるようになりますので、いろいろ試してみてください。

 

イヤーワーク

イヤーワークは、子犬や子猫から老犬、老猫まで幅広くさまざまな効果が期待できる、「万能薬」のようなタッチです。活動的過ぎるまたは興奮しやすい犬猫
を落ち着かせるだけでなく、怖がりで臆病な犬猫の気持ちをなだめるといった、感情を安定させるために使うこともできます。耳のツボを刺激することによっ
て健康の促進にも役立ちます。また、イヤーワークで耳に働きかけることにより、身体全体と臓器につながるツボを刺激することにもなり、循環を活性化し健康促進にも役立ちます。

■イヤーワークで行うサークルタッチ
親指の腹の柔らかい部分で、耳の表面に小さな円を描いて皮膚を動かします

 

■イヤーワークで行うスライド
放射線状に耳全体をまんべんなくスライドします。このとき「花びらを指で挟んでも、ちぎれないくらいの優しい力」で行います。

 

動物との穏やかで楽しい生活をサポートしてくれるTタッチ。ぜひ実生活でご活用ください。

 

 

◆中里 真由美

ころん代表

ホリスティックケア・カウンセラー養成講座 Tタッチ講師
Tタッチプラクティショナー(P2)
アドバンス・ホリスティックケア・カウンセラー
ペットフーディスト
認定動物看護師
ペット東洋医学アドバイザー
メディカルハーブコーディネーター
動物系専門学校講師

人も動物もHAPPYにをテーマに、お互いに楽しく自然体で暮らすことができるよう人と動物をつなぐ活動を行っています。Tタッチプラクティショナーとして、パートナーとオーナーの暮らしをより楽しくするためのワークショップやプライベートセッションを行う傍ら、動物系専門学校で講師として将来の動物業界を担う人材の育成にも携わっています。

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