ホリスティック豆知識Blog

2019年06月12日(水)

豆知識

ペット業界で働く「意味」と「価値」とは

「犬や猫が大好き。いつかペット関連の仕事をしてみたい」と考える方はたくさんいる一方で、「経験がないし、スキルも全く不十分。自分にはまだまだ遠い世界」という方も多いかと思います。

ペットの仕事への憧れに関わらず、「これをやってみたい」という気持ちがあっても、行動する前に不安が募り、いつの間にかやる気が失せてしまうことってよくありますよね。でも、一度きりの人生、それは実にもったいないと思うんです。

今回のテーマは「いつかペットの仕事をしてみたい」と思うみなさんに、「ペット業界の仕事って、世の中的にすごく意義があって素敵なんだ!」ということを知っていただけるお話です。

ペットサロン経営者向けセミナーや人材育成に数多く携わり、これからのペット業界のあるべき姿を追求されている(有)ワンクスクリエイション代表取締役・森たぐい氏にお話を伺いました。

 

ペット業界=社会貢献度の高い仕事。その理由とは?

私は、「ペットに関わる仕事は命の大切さを伝え、社会に貢献できる素敵な仕事だ」という思いがあり、さらに職場環境が良くなるように願い、経営や人財育成の方面からお手伝いをしています。

 

近年、人口の減少とともに、ペット関連の仕事に従事される方も急激に減っています。そのため、ペット業界に限った話ではありませんが、人材不足が大きな問題となっています。
ペット業界は「待遇が悪い」「3Kの仕事で長く続かない」というイメージを持つ方が多いのではないかと思いますが、現在では職場環境が随分改善され、働き方改革も進んでいます。

 

私が小学校4年生の時、文集に書いた将来の夢は「ペットショップの店長」。物心ついたときから犬が好きで、拾ってきては飼えないと返される日々。昭和生まれの犬猫好きの方々なら似たような経験がおありなのではと思います。
小学生の時に描いた夢を追いかけ、19歳でペットショップに勤務。約10年間ブリーディングやショードッグ、トレーニングを学ばせていただいたのち、輸入犬具卸売業に従事しました。
31年経ち、現在はシャンプー・シザーのメーカー経営、日本ペットサロン協会常務理事、ペット業界の経営セミナー、人財育成のお手伝いなどをしています。

 

ペットショップ勤務時代には、グルーミングやペットホテルでお預かりする犬の送迎も仕事の1つでした。送迎先にはとっても怖いおじさんがいて、クレーム対応に伺ったときは死ぬ覚悟でした。
そんなおじさんも愛犬がかわいくなって帰ってくると、声を裏返して「ララちゃんお帰りなさいぃぃ」と満面の笑顔で迎えていたのを覚えています。
怖いおじさんを圧倒的な笑顔に変えられる仕事なんて、他になかなかないと思いませんか?


一般的に犬を飼うと以下のような良いコトがあります。

◎親子・夫婦の会話が増える
◎子供の情操教育
◎ストレス緩和
◎自己重要感を感じられる
◎異種間コミュニケーションができる(察する能力)
◎免疫力が向上し、健康になる

こんなに良いコトをサポートできる仕事が、ペット業界のお仕事です。

 

好きなことを仕事にできる業界

改めて、ペット業界の仕事をほかの業種・職種と比較してみるといかがでしょうか?自分の好きなことを仕事にしている人はどれぐらいいるでしょう?多くの人は会社の待遇や将来性などをポイントに就職先を選ぶことが多いと思います。そう考えると、私は「好きなこと」を仕事にできていることを幸せに感じます。

 

ペット業界の仕事は、圧倒的に人や家族を笑顔にし、幸せにします。その幸せは周囲の人にも幸福感をもたらし、その結果、笑顔やコミュニケーションの花が咲き、地域社会、ひいては日本を幸せにしていくことができるのです。そして、そんな仕事を「好きな仕事」としてできる私たちも本当に幸せだと思います。

 

反面、仕事の内容が「好きなこと」「命の大切さに向き合う仕事であること」から、自己犠牲的に仕事をしてしまう傾向があるのも事実です。また、以前は3Kのお仕事の割には給与が安く、休日も思うようにとれませんでした。その結果、夢と希望を持って就職したにもかかわらず、早期に退職してしまう方が大勢いることは悲しいことです。だからこそ、私は職場環境をさらに向上させることが必要だと感じています。

 

犬や猫の幸せって何?ペットの仕事でサポートできることは?

ペット業界で働いている人は本当に犬猫が大好きで、もっと彼らを幸せにしたい!と思っている方が多いと思います。では、私たちが愛してやまない犬や猫の幸せとは何でしょうか?

例えば、「犬の幸せ」。
美味しいご飯が食べられる、お散歩にたくさん行ける、いっぱい遊んでもらえるなどたくさんありますが、私が仕事を通じて学んだ犬の幸せは「飼い主の方と一緒にいられる」ということです。飼い主の方が愛犬を迎えに来られた時や、送迎で愛犬をお返しした時の犬は、全力で喜びを表現します。その姿を見ているだけで、こちらも笑顔になります。

 

修業時代に、ペットホテルでチビちゃんという中型犬の雑種をお預かりしたことがありました。チビちゃんの飼い主の方がご病気で2年ほど入院されていたためです。
最初は怖がってなかなかなついてくれませんでしたが、毎日お散歩に行き、食事を与えていると徐々に慣れて遊んでくれるようになりました。恐らく信頼関係ができてきたためでしょう。
ただ、約2年ぶりに飼い主の方が迎えに来たとき、思い出すのに1分ほどかかりましたが、思い出した時にはおしっこをしながら「ウァオ~ン、ヒャウ~ン」と鳴き声にならない声で喜びの声を上げました。最近ではYouTubeに、兵役に出ていた飼い主の方に久しぶりに逢えた犬が全力で喜ぶという動画がありましたが、そのような光景です。ファースト飼い主の方との絆は本当に深いなぁと感じた瞬間です。

 

どんなに私たちがかわいがっても、飼い主の方には負けます。かつて、飼い主の方が飼育ノイローゼになり、放置された結果全身フェルト状態でノミだらけになってしまったペキニーズを預かったことがありますが、飼い主のお迎えには全力で喜んでいたのです。
犬にとって飼い主は親以上の深い絆で結ばれた存在です。ですが、ひとつ間違えれば生活が困難な状態になることもあります。

 

また、飼い主の方と話をしていて一番残念に思う言葉があります。愛犬愛猫を亡くされた時に「もう犬(猫)なんて飼いたくない……」です。別れはもちろん辛いです。しかし、辛い別れが来る前には、多くの幸せとたくさんの笑顔と想い出があったと思います。 もしも、虹の橋を渡った愛犬愛猫が天国からその言葉を聴いたならどんな想いになるでしょうか。

だからこそ、ペット業界で働く人は、飼い主の方が犬や猫を飼って最高に幸せを感じられ、またそれが犬や猫の幸せにもなり、最期には飼い主の方が彼らをムギュっと抱きしめて「ありがとう」と言えるような仕事ができると良いですね。

 

では、そうなるためにはどうすれば良いでしょうか。

飼い主の方が最期にムギュっと抱きしめたくなるには、犬や猫ができる限り「ピンピンコロリ」であること。つまり最期までなるべく健康で元気であることです。そのためには4つの条件があります。

1.幼少期から十分な運動をさせて筋肉をしっかりとつけてあげること。
2.個体に合った良質の食事を与えること。
3.犬種、猫種特性に合わせた適切なグルーミング。
4.飼い主の方とコミュケーションが取れるように、犬種、猫種特性に合わせたトレーニングをされていること。

以上のようなことを飼い主の方が学ぶ必要があります。そしてペット業界の仕事の意味は「4つの条件を提供することで飼い主の方、その家族、犬と猫が最高に幸せになること」をサポートするということです。

ペット業界で働く人が原動力となる「グッドサイクル」とは

本当に犬や猫が好きで彼らを幸せにしたいなら、まず飼い主の方を幸せにすることが大切です。
そのためには、飼い主の方への的確なアドバイスが必要です。
的確なアドバイスを行うには、ペット業界で働く人が人間力を高め、犬や猫に対する知識や技術をしっかり磨き、3年、5年、10年と経験を積むことが大切です。
その経験を積むためには、永く働ける待遇・職場環境があり、働く人が幸せであることが必要です。
そんな環境を作るためには、動物病院やペットサロンの健全な経営が必要となります。

 

健全な経営ができるようになれば、幸せで圧倒的笑顔の家族が増えることになります。
圧倒的笑顔の家族が増えれば、「世界中で犬や猫が幸せになる」ことにつながり、犬や猫との共生価値がさらに上がり、命の価値が上がるのです。

 

「ペット業界で働く意味と価値」とは、動物を通じて人・家族・社会が圧倒的な笑顔で幸せになること。そこで働く人が夢と希望を持ち、働くことに幸せを感じること。それらをビジネスを通じて循環させるサイクルを作ることです。

ペット業界のビジネスは今まで競い合いや価格競争が多くありましたが、これからはこのサイクルが回るように、みんなが協力し合うことが大切だと私は考えています。「競争」ではなく「共創」できるように一丸となり、「命が喜び、人が輝く共生社会を創る業界」へと発展させたいですね。

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執筆:(有)ワンクスクリエイション 代表取締役 森 たぐい

<プロフィール>
人財開発推進機構本部理事/人財開発指導者
米国Gallup社認定 ストレングスコーチ
コトマーケティングシニアコンサル
日本ペットサロン協会常務理事
セカイヌ経営塾カンファレンス主宰

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