ホリスティック豆知識Blog

2019年12月26日(木)

豆知識

愛犬のためのホリスティックグルーミングレッスン 【6】肛門腺絞り

【根拠あるやさしいグルーミング】をテーマに、犬の身体の構造や動きを研究し、グルーミングを行うトリマーの石井あゆみさん(トリミングサロン「leaf dog(リーフドッグ)」経営)に、飼い主さんに知っていただきたいグルーミングの基本についてシリーズでレクチャーしていただきます。


定期的なグルーミングは人と暮らす今の犬たちにとっては、必要不可欠なこと。
でも方法を間違えると、とても負担のかかることになります。
そして、その原因となっているのが、飼い主さんの日頃の間違った方法だったということも珍しくありません。

意外と知らなかったことや、間違って行っていたことなど、新たな気づきが満載です。
犬の身体の構造、特性を知り、そのうえで、犬が一生必要とする身体のケアを犬にも飼い主さんにも負担をかけないやさしい時間にするために、ぜひお読みください。

Lesson6 肛門腺絞り

今回は、爪切りや耳掃除と並んで、ほとんどのトリミングサロンのコースの中に含まれている「肛門腺絞り」。この肛門腺絞りってどのようなものか、なぜ絞るのか?などについてお話します。

肛門腺とは?

「肛門の付近にある臭いヤツ!」というざっくりしたイメージの方が多いと思います。

犬の肛門腺とは、分泌腺(臭腺)の事で、肛門の出口付近に左右に1つずつヘーゼルナッツ程度の袋が付いており、その袋の中に分泌腺があります。その袋の名称を肛門嚢(こうもんのう)といいます。
肛門嚢は皮脂腺が大きくなったものと考えられています。肛門腺から分泌される分泌液は肛門嚢に溜まり、排便時に肛門周辺の筋肉で押し出され、便に付着します。便に付着した臭いで動物は個体の識別や縄張りを主張するのに使われると考えられています。(つまり、マーキングのことです)

肛門腺と肛門嚢は、肉食動物のほとんどにあると言われています。肛門腺で有名なのはスカンクですね!スカンクは肛門嚢が発達しており、外敵を撃退する時に分泌物を相手に向けて発射する事が有名です。

実は、肉を食べる私達人間にも、肛門腺はあるようです。
でもご安心ください。ほとんど退化しており、液が溜まる袋の肛門嚢もありません (笑) 。

 

肛門腺はなぜ絞る必要があるのか

さて、話を戻して、次に犬の肛門腺絞りについて解説します。
肛門腺の分泌物はマーキングの意味を持つことが分かっていただけたかと思いますが、ではなぜ、トリミングをする際に、肛門腺絞りという作業が入っているのかはご存知でしょうか。

多くのトリミングサロンでは、慣習として組み込まれているようなのですが、慣習となるまでにはそれなりの要因があると考えた私は、その要因が何なのかをこのように考えてみました。

 

【1】犬の緊張によって不意に分泌物が出てしまう時があり、それが人にとって不快だから
【2】分泌物がたまりすぎることによって、犬が違和感を訴える場合があるから

 

ちなみに…
「肛門腺を絞らないこと」と「肛門嚢炎」との因果関係はないんだそう。
ただ、体質的に、犬はほかの動物に比べて肛門嚢炎になることが多いようで、アニコムの調査によると、犬の消化器官の病気ランキングでは、肛門嚢炎は第4位。消化器の病気の全体の3%ほどを占めています。ただし、なぜ炎症を起こしやすいのかは解明されていません。

では、【1】と【2】について考えてみましょう。

 

【1】犬の緊張によって不意に分泌物が出てしまう時があり、それが人にとって不快だから

これは犬が緊張した時にお尻に力が入ってしまうことが原因です。
肛門腺の分泌物は、生臭くて何とも言えない、独特な臭いを放ちます。犬を抱いている時、もし分泌物が出て飼い主の服についてしまったら…ちょっと嫌な気持ちになってしまいますよね。

そのため、分泌物が溜まりすぎないうちに絞っておけば、万一出てしまっても少量で済みます。肛門嚢に溜まる分泌物の量や溜まる速度は犬によってそれぞれですが、月に1度のトリミングの時に、ついでに絞るという形が多いようです。

 

【2】分泌物がたまりすぎることによって、犬が違和感を訴える場合があるから

これは、まだまだ解明されてない部分があります。

肛門嚢から分泌液が出るタイミングとして多いのは、排便時です。
肛門嚢には筋肉がないため、肛門周辺の筋肉によって押し出されることで出ます。もし、犬の筋肉量が少なければ、肛門嚢の収縮は促されず、分泌液が溜まりやすくなり、溜まりすぎにより何らかの違和感を感じている可能性があります。また、「分必物の量が多い場合」や、「分泌物の粘度が高い場合」にも同様に溜まりやすい可能性があります。
ただし、たくさん溜まっていても気にならない犬もいるので、その場合はそのままでも構いません。

 

「肛門を気にするしぐさ」を知っておこう

肛門を気にするしぐさは、大きく分けて2種類あります。

1.肛門の臭いを嗅ごうとしたり、舐めようとしたりする

 

2.肛門を床に擦り付けてお尻歩きをする

1のようなしぐさを「時々する」場合、分泌液が溜まっていて不快なのかもしれません。溜まっていないかどうかを確認し、トリマーか獣医師に絞ってもらいましょう。

なお、このしぐさを「一日に何度もする」場合はすぐに動物病院で受診してください。何らかの違和感や痛みがある可能性があります。ひどい場合は、お尻を触られるのを嫌がる場合もあります。


2のしぐさは、私の経験上、多くは「肛門嚢炎」ではなく「肛門もしくは肛門周辺の皮膚が痒くてこすっている」という場合が多いように感じます。このような場合は、肛門周辺の毛のカットを控えたり、毛を刈る長さを長めにしたり、シャンプーで過度に洗いすぎないように気を付けたりします。また、赤みがある場合は動物病院で診てもらうことをお勧めします。

なお、繰り返し肛門を痒がる場合、食物アレルギーが隠れていることもあるようです。獣医師とよく相談をして食事を変更をすることで、解決する場合もあります。

お家で肛門を気にしている場合、なめようとするしぐさなのか、床に擦り付けているしぐさなのかをよく観察してみてください。

 

また、オーナーが愛犬の肛門を見るために尻尾を上げるときは、注意が必要です。
肛門や肛門周辺に違和感や痛みを感じている犬は、どうしても尻尾を下げてしまって、肛門が見えにくい場合がありますが、そこで無理に尻尾を上げようとすると尻尾の根元を痛めることがあるからです。
尻尾は背骨とつながっている関節です。可動域には限界があり、個体差も大きいものです。普段から尻尾を背中に背負うようにして歩く犬の場合は、尻尾を高く上げることができますが、そうでない場合は上げることはできません。特にダックスは尻尾を背に上げない事が多いので、尻尾の上げ方は十分に注意する必要があります。

 

お家で肛門腺絞りをする方法

繰り返しになりますが、「肛門腺を絞らないこと」と「肛門嚢炎」との因果関係は解明されていません。ですので、絞る目的は病気予防よりも「万が一分泌物が出てしまうことの予防」です。

もし、パートナーが緊張しやすい性格で、しょっちゅう分泌液を漏らす場合は、お家での肛門腺絞りにチャレンジしてみてください。(ただし、肛門を舐めようとしている場合は何かしらの違和感や痛みがある場合が多いので、トリマーか獣医師に診てもらってください。)


まず初めに、トリマーや獣医師にパートナーの肛門嚢の位置を教えてもらいましょう。肛門嚢の位置は、個体差があるからです。次に、肛門嚢を肛門の出口に向かって押し出すようにします。この時、犬が振り向いて肛門を見てきたり、座ろうと抵抗したりする場合は、無理にしないようにしましょう。痛がっている場合があります。また、無理に強い力で肛門をつまむことで、肛門の筋肉を傷めてしまう場合があるので、十分に注意しましょう。

 

トリマーさんへ

もしこのブログをプロのトリマーの方が読んでくださっていたら、お願いがあります。

肛門腺を絞らないことと肛門嚢炎との因果関係は解明されていませんので、分泌液を無理に全て出し切ろうと頑張らないでください。力いっぱいつまむことで、肛門を痛めてしまう恐れがありますから、半分以上出たところでOKとする心持で行ってください。

また、肛門腺の分泌物の粘度が高く、なかなか出にくい場合はゆっくりと揉むようにしてください。それにより肛門嚢が柔らかくなり、力を加えなくとも自然と出てくることがあります。

また、肛門腺は硬さと色をチェックしておくことが大切です。普段、肛門嚢が柔らかい犬が急に硬くなり、揉んでも柔らかくならない場合は、炎症を起こしている可能性があります。獣医師の診察をお願いするようにしましょう。また、いつも茶色だった分泌物が急に黄緑色になり、お尻を舐めるようなしぐさがある場合も、獣医師の診察をお願いするようにしましょう。

 

肛門腺絞りは、「これまでやっていたから」という理由で行っているケアかもしれません。正しく理解し、犬に負担のない方法で、ケアしてあげたいですね。

 

犬と猫に負担をかけない、やさしいお手入れを動画で学びませんか?

受講生14,500名突破。犬猫の健康を「食、心、体」の3つの視点から幅広く学べる通信講座

ホリスティックケア・カウンセラー養成講座の詳細

 

 

<バックナンバー>

愛犬のためのホリスティックグルーミングレッスン 【1】爪切り
愛犬のためのホリスティックグルーミングレッスン 【2】ブラッシング初級
愛犬のためのホリスティックグルーミングレッスン 【3】ブラッシング中級・上級
愛犬のためのホリスティックグルーミングレッスン 【4】耳ケア
愛犬のためのホリスティックグルーミングレッスン 【5】歯磨き

———————————-
◆リーフドッグ石井 あゆみ
ホリスティックケア・カウンセラー
JKC A級トリマー
日本ペットサロン協会アンバサダー

専門学校を卒業後2つのお店で修行をし、その後、2009年27歳で起業しleaf dogを開業。
論理的にとことん優しいグルーミングを日々研究している。
国内外のコンテストでの受賞暦も多く、高い技術を持つ。
業界誌トリムの連載を2017年8月号から開始。


 

ホリスティックケア・カウンセラー養成講座

スキルアップ専門講座

ホリスティックケア・カウンセラー養成講座とのお得なセット受講、あります。

ホリスティック豆知識トップへ戻る

タグ一覧